Aug 30, 2008

Electron accelerator

 X線は貫通力の強い高エネルギーの電磁波で、加速した電子ビームをタングステンなどのX線ターゲットに衝突させて得られます。物体の中を透視する産業用の非破壊検査では、近年、厚い物体を対象とする用途が拡大し、より高いエネルギーのX線を発生するコンパクトな装置が求められています。ところがX線源として一般的なX線管球は印加する電圧に応じて絶縁の強化が必要なことから、得られるX線エネルギーは300keV程度が限界です。一方、直線型の電子加速器は990keVと高エネルギーのX線が発生できますが、装置の大きさが1mを超えることから、狭い場所での使用や機器への組み込みが困難でした。
 また、X線による透視は、胸部X線写真のように、透視物体のX線の吸収率の差で生ずる濃淡を利用した吸収撮像が一般的ですが、近年ではX線屈折率の差で生ずるわずかな屈折を利用した屈折撮像が注目を集めています。屈折撮像は、従来の吸収撮像に比べて物質境界がくっきり見え、吸収撮像ではほとんど区別のつかない臓器中の組織差などが検出可能で、医療診断での利用を期待されています。ところが屈折撮像に用いるX線源には発生点径が小さいか、または、平行にそろったX線が必要なため、従来は装置の大きさが数mから数百mと巨大な放射光施設でしか研究ができませんでした。
 当社は今回、小型で、電子ビームを高エネルギーまで加速でき、発生点サイズが小さいX線を発生できる電子加速器を開発しました。




1.外径15cmの加速器で990keVまで電子を加速することに成功
電子銃から発した電子をドーナツ状の真空ダクト内で幅広の電子ビームとして加速する当社独自の加速手法と、電子ビームを加速しながら所定の領域内に収束させる電磁石の開発により、990keVまでの加速を、外径15cm、重さ10kgの手のひらサイズの加速器で実現しました。これと同等のエネルギーまで加速するには、全長が100cm、重さ350kg程度の加速器が必要でした。

2.発生点径が10μmのX線の発生と物質境界が強調されたX線画像の撮影に成功
従来のX線源は大きなX線ターゲットに電子ビームを衝突させる方式のため、100μm程度の発生点径でしたが、今回、先端が7μmの針状のX線ターゲットに加速した電子ビームを次々に衝突させるビーム制御に成功し、発生点径が10μmと微小なX線の発生に成功しました。
このX線を用いて幅0.5mmの半導体のリードフレームを撮影したところ、屈折撮像の特徴である物質境界がくっきりとしたX線画像を得ることができました。

No comments: