本日は、お子さまの発熱につきまして、お話ししたいと思います。
はじめに、小児の腋窩正常体温は、36.5℃から37.2℃ぐらいであります。正常体温には個人差、年齢差がありますし、新生児や乳児では、37℃から37.5℃までは正常と考えられております。 わたくしたち小児科医からのお願いでありますが、お子さまが健康な時に検温し、正常体温を把握しておいて頂けるとありがたいです。 というのも発熱の定義が、平熱よりも1℃以上高い場合と考えられているからであります。
ここで、小児の発熱の特徴をあげますと、小さいお子様では、些細な原因で発熱し、しばしば高熱になります。咳、鼻水や下痢などの随伴症状のあるものが多いです。しばしば発熱が、初発症状、あるいははじめて気付かれる症状であります。発熱の原因として、急性感染症が最も多いです。大部分は2.3日で解熱し、7日から10日以上発熱が持続する事はあまりありません。乳幼児では熱性けいれんを合併しやすいです。 発熱および食事と水分の摂取不足により容易に脱水をきたしやすいです。学校、幼稚園、保育所などで同様の感染が流行している事が多いものです。
次に、発熱の原因でありますが、小児の発熱の大部分は急性のウイルス感染で、乳児期、幼児期、学童期を通じ、上気道炎、下気道炎、急性胃腸炎がその原因であります。
次に随伴症状と疾患について述べます。
咳、鼻水などの呼吸器症状は、気道感染症を示しており、急性鼻咽頭炎や急性気管支炎や急性肺炎を考えます。
耳に手をやる、耳だれなどは、急性中耳炎を考えます。
嘔吐、下痢、腹痛、食欲不振などの消化器症状からは、感染性胃腸炎を考えさせます。 血便は病原性大腸菌O157感染、サルモネラ感染やキャンピロバクターなどの細菌性腸炎を考えます。
発疹は、麻疹、風疹、水痘、突発性発疹症、伝染性紅斑、溶連菌感染症、手足口病などの古典的急性発疹疾患、エンテロウイルス感染、伝染症単核球症、川崎病やB型肝炎ウイルスによるジィアノッティ病などを考えます。
頻尿、排尿痛などの泌尿器症状は、急性膀胱炎、急性腎盂腎炎などの尿路感染症を考えます。
神経症状としては、けいれん、頭痛や項部硬直などの髄膜刺激症状などがみられます。けいれんの場合、熱性けいれんが多く、その予後は良好なものであります。意識障害が遷延する場合には、脳炎、脳症が心配されます。
頻脈やチアノーゼなどの循環器症状は、感染性心内膜炎、心筋炎や川崎病などで呈する事があります。
頚部、腋窩や鼠蹊部などのリンパ節腫脹は、川崎病、EBウイルス感染、風疹、白血病や悪性腫瘍などにみられます。
骨、関節痛は、若年性関節リュウマチ、白血病やインフルエンザにみられます。
次に発熱しているお子さんの診察所見について述べます。
私たち小児科医は、口腔内所見を重要視しております。なぜなら所見によりその病気を診断する事が出来るからです。
はしかはでは、カタル期といわれる病初期にコプリック班と呼ばれる第一小臼歯部のほほの粘膜に白い斑点と周囲に紅暈がみられます。
ヘルパンギーナでは、口腔後半部の軟口蓋状に口内炎ようの粘膜疹がみられます。 単純ヘルペス感染症では、初感染の場合、高熱に加え、歯肉全体の腫脹、発赤ならびに口内炎を多発します。その後神経節に潜伏感染し、感染やストレスなどで再活性化されると、口腔前半部の口内炎や口唇周囲に水疱を形成します。
乳幼児の初めての高熱として知られる、突発性発疹症の場合には、病初期に永山班とよばれる口蓋垂周辺の小さな初赤を認めます。
扁桃腺についた白い膿は、アデノウイルス感染症やEBウイルス感染症ならびに溶連菌感染症でみられます。
続いて発熱時の家庭での過ごし方について述べさせていただきます。
お子さんの発熱の原因は、大半が鼻かぜやのどかぜであります。しかもその多くが特殊な治療を必要としないウイルス感染症であり、3日日から5日間の発熱期間で軽快していくものであります。
一般に40℃以下なら、発熱そのもので脳に障害を来すことはありません。さらに高熱であるほど重症というわけでもありませんので、発熱そのものに一喜一憂することはありません。まず、お子さんを連れてこられた保護者の方にそのようにお話し、落ち着いていただくようにしております。
実際には、お子さんを安静にし、十分に水分をとるようにしていただきます。ただし、乳幼児で熱があっても部屋で動き回る子は、無理に寝かしつける必要はありません。
38℃から38.5℃までは、一般状態がさしておかされない事が多いですので、冷やす程度で経過をみていただいております。39℃以上の高熱で状態が悪いような場合に限って、38℃を目標に解熱剤を使用していただいております。解熱剤の効果は一時的で、解熱しても病気が治っていないことに注意が必要です。そもそも、解熱剤の使用は、発熱で消耗が強く食欲が無い時などに、解熱により気分を良くして、水分摂取や食事の摂取が可能になることを目的に考えております。あくまでも、対症療法であり、解熱剤は6から8時間おきに使用するのがよいでしょう。高熱時には、血管表材部である、側頭部、頚部、腋窩、鼠径部に氷のうをあてると高い解熱効果がえられます。
そのような対処をしていただいた上で、病院を受診するタイミングですが、元気がなくなったり、水分食事の摂取が悪くなったり、尿量が減少したりする等の症状に変化を来した場合、あるいは、あらたに症状が出現しした際には受診していただくことが必要と考えます。
Sep 24, 2007
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