Jul 24, 2008

Cyberknife

 サイバーナイフは、呼吸などによって運動するがん細胞を、1ミリ単位で正確に追尾して照射することができる「追尾型定位照射」という特性を持っており、「痛みのないがん治療」「外科的施術を必要としない画期的な治療」として、1996年に日本で初めて導入され、現在国内ではその後継装置のサイバーナイフ Ⅱが20台使用されている。

 従来の放射線治療では、周囲の正常な細胞にも放射線が当たることで、肺がん治療後に肺気胸が発症したり、前立腺がん治療後に出血性腸炎が発症したりする副作用も見られたが、2004−07年までの世界のサイバーナイフⅡの臨床データ約800件中、副作用の報告例はゼロだという。また従来は、肺がんの場合は50−70回、前立腺がんは約50回の治療(照射)を必要としていたが、サイバーナイフⅡでは5回程度の通院治療で済むようになり、患者への負担が大幅に小さくなった。このほか、患者にとっては▽痛みがなく、麻酔を必要としない▽外科治療に比べてダメージが少ない▽治療後、すぐに社会復帰できる—などのメリットがある。胃、食道、十二指腸、大腸、小腸などの消化器官系のがん治療には使えないが、今回の適用拡大により、肺がんと前立腺がんの治療への効果が最も期待されているという。

 治療費は、脊髄、肺、肝臓など保険が適用される部位の場合は約 63万円だが、さらに高額医療費軽減措置が適用されるため、実質的な負担は約8万円。一方、膵臓、前立腺、腎臓などは保険適用外のため自由診療となる。国内でサイバーナイフⅡを販売する日本アキュレイの木梨峰夫社長は会見で、「さらに保険適用範囲が広がるよう申請していきたい」と語った。

 年間のがん発症者数は約60万人で、約300万人が闘病生活を送っており、05年にはがんによる死亡者数は32万人を超えた。死亡者の3人に1人ががんで亡くなっているという。中川准教授は「将来のがん治療は放射線が主役となる。10年後は、がん治療の2人に1人が放射線治療を受けることになるだろう」と述べた上で、「放射線をがん細胞だけに集中させることができれば、がんは治る」と強調した。

 また、8年間の臨床経験を持つ横浜サイバーナイフセンターの佐藤健吾院長は、症例を挙げながら、「腫瘍とは、異常なDNAが細胞を造り過ぎた状態。放射線はその異常なDNAだけを狙って壊すことができる。今後は国内で世界標準のサイバーナイフ治療が受けられるようになる」と説明した。

 日本アキュレイの木梨社長は、「がん撲滅、人類の幸福に貢献したい」と意欲を示した。現在、国内では20台のサイバーナイフⅡが設置されているが、今後5年間で約100台にまで増えると見込んでいる。一台の価格は約6億円で、使用するには1.7−2メートルの遮へいされた部屋が必要

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