May 28, 2007

ES cell

私たちの体を構成している組織は、一旦損傷すると自然には回復せず、そのため大事な機能を失ってしまうことがあります。失われた組織機能を取り戻す医療として、幹細胞を活用した再生医療に対する期待が高まっています。とくに胚性幹細胞(ES細胞)は、身体の全ての種類の細胞に分化して組織を構成する能力(多能性)や試験管内で無限に増える能力(自己複製能)を持っており、万能細胞として再生医療の切り札となることが期待されています。
 これまでに、ヒトES細胞からドーパミン神経細胞などいくつかの種類の細胞を生み出す培養方法が確立されていますが、ヒトES細胞を自在に医学利用するためには、従来の培養法で大きな問題となっている「細胞死」を防ぐ必要がありました。
 理研 発生・再生科学総合研究センター 細胞分化・器官発生研究グループでは、この細胞死を防ぐ阻害剤を発見し、簡単な薬剤処理でヒトES細胞の培養効率を飛躍的に向上させる方法を世界で初めて開発しました。さらにこの技術を用いて、これまで困難であった大脳皮質前駆細胞を効率的に産生することにも成功しました。
 今後はこの新しい培養法によって、ヒトES細胞の大量培養が容易になり、再生医療への応用に必須である細胞の品質管理、大量培養、分化技術の開発が大きく進むことが期待されます。

No comments: