Oct 2, 2007

MEN

1型疾患: 多発性内分泌腫瘍症候群1型の人では、副甲状腺(甲状腺に接している小さな腺)、膵臓、下垂体、やや少ないが甲状腺や副腎などのうち、2つあるいはそれ以上の腺に腫瘍ができて、増殖と活性が活発になります。

1型疾患の人のほとんどすべてに副甲状腺腫瘍があり、大半は非癌性ですが、副甲状腺ホルモンを過剰に産生します(副甲状腺機能亢進症)(副甲状腺機能亢進症のしくみを参照)。過剰な副甲状腺ホルモンは血液中のカルシウム濃度を上昇させ、ときには腎結石を引き起こします。

1型疾患の多くは、膵臓のホルモン産生細胞(膵島細胞)に腫瘍が発生します。腫瘍のいくつかはインスリンを多量に産生し、その結果、血糖値が低下しますが(低血糖)、特に数時間何も食べない場合はなおさら低下します。半分以上の膵島細胞腫瘍はガストリンを過剰に産生して胃を刺激し、酸を過剰に産生させます。ガストリンを大量に産生する腫瘍があると、しばしば出血する消化性潰瘍が発生し、穿孔ができて胃の内容物が腹部に漏れ出したり、あるいは胃の働きが妨げられます。酸度が高いと、膵臓からの酵素の活性が妨げられ、下痢と脂肪性の悪臭のする便(脂肪便)が出ます。残りの膵島細胞腫瘍は、血管作用性腸管ポリペプチドのような別のホルモンを産生して重度の下痢や脱水症状を引き起こします。

膵島細胞腫瘍には癌性のものがあって、体の他の部位に広がる(転移する)可能性があります。癌性の膵島細胞腫瘍は、膵臓にできる他のタイプの癌よりも増殖速度が遅い傾向にあります。

1型疾患の人の多くには下垂体腫瘍があります。これらの腫瘍の一部はプロラクチンを産生して、女性では月経周期の異常、男性では勃起機能不全(インポテンス)を引き起こします。別のホルモンは成長ホルモンで、先端巨大症を起こします(下垂体の病気: 先端巨大症と巨人症を参照)。下垂体腫瘍のごく一部はコルチコトロピンを産生して副腎を過度に刺激し、コルチコステロイドのホルモン値が高くなるクッシング症候群を発症します(副腎の病気: クッシング症候群を参照)。下垂体腫瘍のうち、ホルモンを産生しないものもいくつかあります。下垂体腫瘍は、頭痛、視覚障害および隣接する脳の一部を圧迫して下垂体の機能低下を引き起こします。

1型疾患の人では、甲状腺と副腎の過剰な増殖と活性化、または腫瘍の発生が起こります。ごく少数の人では異なるタイプの腫瘍、カルチノイド腫瘍を発症することがあります(カルチノイド腫瘍を参照)。軟らかく、非癌性の脂肪組織の増殖(脂肪腫)が皮下に現れる人もいます。



2A型疾患: 多発性内分泌腫瘍2A型の人では、腫瘍、過剰な増殖や活性が、甲状腺、副腎、副甲状腺のうちの2〜3つの腺でみられます。

2A型疾患の人のほとんどすべてが甲状腺髄様癌を発症します(甲状腺の病気: 甲状腺癌を参照)。その約50%は副腎の腫瘍である褐色細胞腫を発症し(副腎の病気: 褐色細胞腫を参照)、エピネフリンなど腫瘍が産生する物質によって血圧が上昇します。高血圧は断続的あるいは持続的に、ときには非常に重症になる場合もあります。

2A型疾患の人の中には副甲状腺が機能亢進し、そのため血中カルシウム濃度が高くなり、腎結石を引き起こす人もあります。副甲状腺が肥大しても副甲状腺ホルモンを大量にはつくらないので、高カルシウム濃度と関連した症状は現れません。




2B型疾患: 多発性内分泌腫瘍2B型の人には、甲状腺髄様癌、褐色細胞腫、神経腫(神経周囲に増殖する腫瘍)があります。2B型疾患は、親族にこの疾患の発症者がいない人でも発症することがあります。

2B型疾患の甲状腺髄様癌は早期に発症する傾向があり、生後3カ月の乳児の報告例もあります。2B型疾患の甲状腺髄様癌は2A型疾患より増殖速度が速く、急速に転移します。

2B型疾患の人の大半は粘膜に神経腫を生じます。これは唇の周囲、舌、口内につやがあるこぶが現れます。神経腫はまぶたや、結膜と角膜を含む眼のきらきら輝いている表面にも現れます。まぶたと唇は厚くなることがあります。

消化管の異常は便秘と下痢を引き起こします。ときおり、結腸が肥大して拡張したループ(巨大結腸)を形成します。これらの異常は、おそらく腸神経に神経腫が増殖した結果でしょう。

2B型疾患では脊髄の異常、特に背骨の弯曲(わんきょく)が起こります。また足とももの骨の異常もみられます。多くは手足が長く関節がゆるくなります。

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