国境なき医師団(MSF)は、患者が服用しやすく、より安価な新しいマラリア治療薬である、アルテスネート(artesunate、アルテミシニン誘導体)とアモジアキン(amodiaquine)を一錠に含んだ新薬の導入を歓迎する。ASAQ1と呼ばれるこの新薬は、DNDi2(Drugs for Neglected Diseases initiative、顧みられない病気のためのイニシアティブ)がサノフィ・アベンティス社と共同開発したものである。これは、医薬品は特許を適用することなく、公有のものとして研究開発を行うことが可能であることを実証している。
世界保健機関(WHO)は、マラリアの治療に、アルテミシニン誘導体と他の抗マラリア薬の併用療法(ACT)を用いることを世界の多くの地域で推奨している。しかし、この治療法は未だに広く適用されていない。毎年少なくとも4億から5億人がマラリアに感染しているにもかかわらず、ACTを受けている患者は8千万人以下である。2006年、MSFはアルテスネートとアモジアキンを用いて1千7百万人を治療したが、これは2種類の錠剤によるものである。
2006年、MSFの医療チームはチャドで8万人近くのマラリア患者の治療を行った。チームの医療コーディネーターであるミシェル・ケレ医師は語る。「2種類の薬剤を1錠にまとめることにより、患者への負担が軽くなります。マラリア治療の飛躍的な進歩と言えます。例えば、子どもは3日間の治療で、従来は1日4錠であるところを、1錠だけ服用すればいいのです。錠剤の数を減らすことによって、患者は治療薬の服用がしやすくなります。また、薬剤耐性のリスクを低減することができます。」
ACTをより広範に利用可能にするには、価格が主な障害の一つとなっている。新しい混合薬であるASAQの価格は、5才未満の小児向けは0.5米ドル(約60円)以下、5才以上の小児と成人向けは1米ドル(約120円)以下と、錠剤が2種類の場合と比較して40~50%安価である。しかし、マラリア治療を必要としている全ての地域でこの治療薬を提供するには、さらに薬価を下げる必要がある。
MSFインターナショナル会長のクリストフ・フルニエ医師は語る。「ASAQはDNDiと協力団体が初めて発表する医薬品です。これは、低所得で十分な医療サービスを受けられない地域の患者のニーズに焦点を当てた、医療上の研究開発が有効であることを証明しています。医薬品が特許により保護されていないため、この製品は顧みられない病気に関するさらなる研究を行う上で有望なモデルとなっています。特許が適用されないため、複数の製造元が価格競争を行い、この薬を広く利用可能にすることができるでしょう。」
MSFは、アルテスネートとアモジアキンの有効性が高く使用が推奨されている地域で行う全てのプログラムで、2種類の錠剤から混合薬の使用に切り替える予定である。ASAQはアルテメーターとルメファントリンの混合薬に次いで市販されるアルテミシニン系の2番目の処方で、さらなる混合薬の開発が必要とされている。
1.DNDiは、2003年にケニア医学研究所、オスワルド・クルーズ財団(ブラジル)、マレーシア保健省、パスツール研究所(フランス)、インド医科学評議会、MSFによる医薬品開発のための共同事業として発足した。
2.ASAQはDNDiが初めて開発した医薬品である。DNDiは現在22のプロジェクトの研究開発を行っている。マラリア、カラアザール(内蔵リーシュマニア症)、アフリカ睡眠病、シャーガス病などの顧みられない病気向けに、活動地での治療に適応した、新しく改良された治療薬を開発する事を目指している。
Mar 9, 2007
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