唾液の分析による簡単で安価な検査法が、早ければ2011年には標準的検査として利用されるようになる見通しだ。医療の場では、非侵襲的な疾患検出方法が強く望まれているが、現在のところ唾液検査は一般的ではない。この現状が変わりつつあるという知見が、ニューオーリーンズで開催された国際歯科研究学会(IADR)年次集会で発表された。
米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)歯科学研究所のDavid T. Wong博士は、複数の研究機関と協力して唾液に含まれる、いわゆる診断用「アルファベット」を解読するという根気のいる作業に取り組んでいる。これまでに、唾液の蛋白(たんぱく)およびメッセンジャーRNA(mRNA)に基づく2種類の「アルファベット」が解読されてきており、唾液蛋白が1,500種類以上、mRNAが3,000種類以上、同定されたという。
この研究から、すでに口腔癌(がん)およびシェーグレン症候群の診断につながる指標が見つかっている。口腔癌は5種類の蛋白と4種類のmRNAによって90%以上の確率で特定することができ、シェーグレン症候群でも数種類の蛋白およびmRNAがマーカーとなるという。米国では毎年3万1,000人が口腔癌と診断され、約7,000人が死亡しており、唾液検査による早期発見の実現が期待される。シェーグレン症候群の患者数はさらに多く、米国では400万人以上が罹患している。
米国歯科研究学会(AADR)は、唾液は血液や尿と同じように重要な情報の宝庫であるとして、Wong氏らの取り組みを支持。すでに、麻疹、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、風疹、肝炎(A、B、C型)、乳癌、アルツハイマー病および嚢胞性繊維症を唾液から検出する新しい検査法が開発段階にあり、2004年には、米国食品医薬品局(FDA)により唾液によるHIV検査が認可されている。将来的には、鉛への曝露や薬物、アルコールの乱用の指標としても唾液が利用されるようになると思われる。
Wong氏は、この検査技術をできる限り早く医療現場に届けるため、科学的信頼性と臨床的実用性の確立に取り組むとのこと。別の専門家は「個人単位の予測的中率、信頼度が鍵となる。これは大きな障壁だ」と指摘しつつも、この最先端の取り組みは極めて有望なものであるとして、期待を寄せている。
Mar 30, 2007
Subscribe to:
Post Comments (Atom)
No comments:
Post a Comment